勤め人システムのたそがれ

大学生の頃、

「もうすぐ自分は勤め人になるのだ」

と思うと、暗鬱な気分になった。

大学はまだしも自由の空気があって自分の肌に合っていたが、勤め人というステージはどうやら、僕が吐き気がするほど嫌いな中学、高校の形に近いと聞こえてくる。

上の立場の人が、権威を笠に着て恫喝するように命令し、それに対して一切口ごたえを許さない『部活のような空気』があると言う。

「すげーやだわ」

と思ったが、僕は与えられた大学期という自由の間に自分のビジネスを作る事が出来なかった。

相場なぶって浅はかにもそれをビジネスだと思い込んで、たしかに元手をウン十倍に増やすことは出来たが、その先(※実業、堅実な商売)が無かったがために、やらでもの相場を張り、資金溶かして就職するしか無くなった。

だから僕は仮想通貨相場が現れた時に、かつて株小僧やってた頃の相場が重なって、どうせ二の舞でしょと最初から冷めてた。

そんなであったから、負けを認め、頭丸めて刑に服する気持ちで勤め人になった。

(参考)まあそこは僕の想像を遥かに絶する地獄だったよね。
・(旧ブログより)プロローグ
・(旧記事)奴隷の烙印

勤め人を始めてみて、少しずつ社会の掟を学び取って行ったが、まず物凄く不思議な事があった。

「なんでこの人たちは一生懸命働いてるんだろう?」

と。

仮に頑張って結果出したとしても給料は増えない。

社内報とか表彰に名前が載って、狭い村の内で名誉が与えられるだけだ。

金銭的な報いは、5万ぐらいボーナスが増えるだけ。

じゃあ頑張らなかったら?

上司からバリクソ怒られる。

だけどそれだけだ。クビになる訳じゃない。

しかも最近はパワハラがどうちゃらって事で、バリクソ怒られるオプションも縮小傾向である。

確かに、名誉が失われると言うのはあるだろう。

社内の女の子からモテなくなるって事もあるかもしれん。

しかし、会社の外で女の子と仲良くなって、セックス資源を自給できる技術があるならば全く何の痛痒も無い。言いたいやつには言わせとけばいい。

頑張らなくても給料も変わらない、怒られる訳でもない、生ぬるいお説教を受けて終わり、それをやり過ごせば普通に給料貰える。

勤め人世界とは、信賞必罰がまるで機能しない世界なのであった。

リスク取ったり、120%の力で頑張るインセンティブが、まるで存在しない。

「しっかし、なんでこの人達はこんな必死なんだろう?何が彼らを頑張らせるのだろう?」

といぶかしくて仕方がなく思っていた。

そんなある日、勤め人としての経験を更に積んでゆくうちに、僕は恐るべき事に気が付いたのだ。

「むっ!この人たちは全然必死に働いてなんかいないじゃないか!」

「必死になってるフリを、必死に頑張っとるだけだ!」

「なるほど!勤め人の世界とは、建前の世界なんだ!」

と。

今週は一日4時間しか寝てないだの、健康診断行ったら肝機能が悪い尿酸値が悪いだの、ストレスで顔面神経麻痺になっただの、歯医者に行く時間が無いから虫歯放っておいたらバイキンが入って微熱が続いてるだの、嫁が鬼のように騒ぐから体力が回復できないだの。

ありとあらゆる体調不良ネタと不幸ネタが出て来る。

全部ウソ。ウソと言うのがひどくても話半分でいい。だって、剣林弾雨の戦場に放り出されたらそいつの顔面神経麻痺なんか一瞬で治るし、鬼嫁なんかは平和の産物で死の恐怖を背負った男が一喝したらすぐ黙る、いやマジで。

そして、24時間仕事してる演出。勤め人の鑑は夜の22時に会社携帯が鳴っても2コールで電話取る。

これも要は上司に対する演技。

とりわけ、仕事してるんだかしてないんだか分からない覇気のない連中ほど、いつも体調不良と我が身の不幸を訴えているし、24時間仕事してるキャラの演出が細やかに周到であった。

青臭い僕はそれらの演出にまんまと騙されていたのである。

僕は自分が最低7時間(できれば8時間)寝ないと動けないから、この人はさぞ辛かろうなあとか、僕なら37℃の熱が出たら咳が出て仕事にならんからすぐ病院行くけど、不調を押して仕事してるこの人の精神力は驚異的だな、とか思ってた。

そもそも僕は19時過ぎたら会社の携帯電話なんか電源落としちゃう。だって仕事終わってるし。(何人もワシの思索と副業の時間を妨げる事は許さぬ)

22時に鳴った電話取るとかマジでプロ意識すげえな、と思っていたんだ、当時は。

上司もそう言う人たちの滅私奉公の姿勢に満足げな様子で、うんうんと点頭し、

「あいつは頑張ってる」

「あいつは苦しんでる」

などと言って、心から同情している風であったが、これもまた上司と部下との阿吽の呼吸によって構築された建前だったって事も、若かりし僕は気づかない。

実はね、ぜんぶ嘘なんよ、体調不良も不幸も。きつそうな顔してれば『楽』だからそうしてるだけ。みんな極めて功利的に動いてたって事。

それが会社、それが勤め人。

じゃあ肝心の営業成績はどうか?と言うと、青ざめた顔で必死に働いてる人と、ゆるふわやってる僕と、実際の所は明確に区別はつかない。

『中の下』とか『中の中』の成績であって、そんなに劇的に変わるもんじゃ無い。

上司のおぼえについては、必死な人にはめでたく、僕はゴミ扱いされていたが、じゃあ給料はどうなのか?ってなると、これまた誤差の範囲というかほとんど変わらない。

『評価』って謎の儀式があったけど、あいつはAランクだ、僕はBランクだの、そんな話で盛り上がっていただけで、実際のところは僕もふつうに毎年昇給していた。

「は!?じゃあぜんぜん意味ねえじゃん!」

という実態を知って、もう僕は魂のレベルで白けまくった。(※顔だけは神妙にする、という老獪さをその時は身に着けていたのだが)

むしろ、目標管理シートみたいなの作らされて、皆の前でプレゼンさせられて、準備にクソ時間がかかって、それで給料含めて何事にも影響しないのだから害でしかない。

頑張ろうがサボろうが、クビにならない、給料も減らない、かと言って別に給料も増えない。

むしろ『抜擢』されるほうがヒドイ目にあうのもおかしな話だった。

特に優秀とされるAランクやSランクを連発する人は、本社登用だとか言って東京勤務になるんだけど、営業手当はつかないわ家賃手当もつかないわ東京家賃高いわで、可処分所得は大幅に下がってしまっていた。

昼は外食するカネが無く、自販機で水を買うのも躊躇する、という財務状況らしく、『本社登用』された札付きの優秀社員たちは、会社に弁当と水筒持参で出勤していた。

女の子なんか、食パンかじって仕事してた。

怖い社長と怖い役員たちがピリピリしてる殺伐とした中で、本社勤務の人たちはヘロヘロになって毎日終電まで働いていると言う。

一方で僕はと言うと、札付きの不良社員で、ゆるふわ社員であった。

19時以降は絶対に電話出ないし(※本音では18時以降謝絶にしたかったから、1時間ボランティアしてやっとるわのつもりだった)、毎日7~8時間寝るし、健康診断の数値も悪いところなぞ一つも無い。

「なんでお前そんなに顔ツヤいいの?」

と言う理由で、上司から怒られてたぐらいだ。

勤め人というのは辛そうに生き、不健康そうな顔をしていないといけないものらしい。アホくさ。

不動産からの家賃収入が当時ですでに月に15万ぐらいあって、三流ド素人アフィリエイトもなんだかんだ月5万ぐらいの収入で、テレビ観ない、雑誌買わないがゆえに物欲が無く、正直不動産以外に欲しいものが無いからどんどんお金が貯まる。

僕は丸い物を丸いと言っていただけだ。リアリズムに徹していただけ。

勤め人たちは丸い物を三角だと言って、みんなで嘘ついて、その嘘を本気と思い込んで、踊ってる。

それしか生き方を知らないからだ。勤め人は従うしか無い。

いや、なんつーかお前、それって生きてるって言えるのか?

たまに、王様の耳はロバの耳だとわめくワシみたいなド不良が出て来ると、上司たちは煙たくてしょうがないさそうだった。

ま、自分が根本的に勤め人に不向きだと言うことを差し引いても、勤め人というシステムは制度疲労が限界にまで達していると、このごろは思うのだがどうだろうな。

をはり。

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最後に、腐るほど聞かれる不動産オススメの本。
全てはこの一冊から始まったって言っても過言ではない至高の一冊を紹介する。
今後、僕が不動産の話をする時は全てこの本が土台となっていると思って欲しい。
僕が、日がな勤め人勤め人と連呼しているのも、加藤さんの影響なのである。
(まあ不動産クラスタの共通語だけどね)

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ちと宣伝です。

勤め人を卒業するためのステップを、Voicyでなるべく詳しくお話しております。ブログと同様、無料でございます。
続き物になっておるので、第一話から聴いて頂くのがよろしいかと思う。

サウザーラジオ~青雲の誓い~ 第一話

そうそう、最近、数あるVoicyチャネルで1位になってしまったのだった。
フォロワー云十万の化け物たちを向こうに回して、僕もよくやるわ、って感じですよ。